2015年5月18日月曜日

書評:宇宙が始まる前に何があったのか?

この宇宙はどの様に始まったのだろうか?
宇宙の果てには何が有るのだろうか?
我々は、地球は、銀河は、いったい「何で」できているのだろうか?

日常の中でこのような疑問は中々出てこないかもしれないし
当然、考えた所で、答えらしきものもはそう簡単には見いだせない。

しかし、このような根源的な問答は
知的好奇心をもてあそぶだけではなく、
それを中長期で繰り返すことで、
少しづつ、だが確実に、
人生を見つめる目線が変わってくるし、
その答えもらしきものの変化が自身の変化に気づくきっかけにもなる。

そしてそれは最終的に、行動を変容させる力になっていくと感じている。


そしてこのようなテーマは一人で考えるよりも
当然、専門家・研究者の話を聞くことや、
読書等を通じて行うのが効果的だろう。


先日、目的に合わせた本の選び方について記事を書いたが
このような読書は「知識ベース」を作り込む行為になればと思っている。
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ローレンス・クラウス著 文藝春秋
「宇宙が始まる前に何があったのか?」
は、宇宙物理学の最先端の研究結果に基づいた
宇宙誕生から未来までの話が、
専門的ではありながらも一般読者向けに平易に書かれている。

※ただし、量子論や一般相対性理論等に関する造詣の深さによって、
 読み解ける深さが大いに変わってきそうだ。
 私も大いに苦戦し、何となく読めた気になっている程度だと感じている。


・宇宙は無から生じた。
・ビッグバン仮説は間違いなさそうだ。
・宇宙空間はいまでも膨張し、その膨張率も加速し続けている。
・その為、やがては高速を超えて空間が膨張する。
・この空間の膨張によって、約2兆年後には銀河系以外は見えなくなる。
・それは、現在を含む数千億年ほどの「僅かな」期間が、宇宙観測に最も適した稀有な時代であることを意味している。

・宇宙の膨張率の測定から、宇宙全体の物質量が推定された。
・その事から、未だ観測できていないけれど宇宙空間のどこかに在るとされている「暗黒物質」「暗黒エネルギー」が有ることが推定された。
・つまり、宇宙の99%は我々の目に見えない物で構成されている。(それらの起源は未だ全くの謎)

・ビッグバンの初期に今の宇宙を生み出したとされる「インフレーション」という現象がある。
・インフレーションは我々の宇宙を含む「様々なタイプの宇宙」を生み出している可能性がある。
・我々の宇宙の他にも無数の宇宙が存在する事を「マルチバース」と呼ぶ。


以上のような重要な仮説とその裏付けとなった研究結果等が
コンパクトに工夫して書かれていて、理解の程度はともかく
大変おもしろく読めた。

さらに本書が面白い所は、これらの最先端の宇宙物理学の研究結果と、
神学や哲学といった形而上学的な考え方とを対比させている所で、
「ビッグバンは天地創造の証拠だ」といった
悪く言うとご都合主義的な人間原理と科学的アプローチとでは
本質が異なるということが、本書を通じて語られている様に感じられた。

著者を始め、飽くなき好奇心と開かれた心で、
あくまで経験と観測の裏付けで世の中を理解しようとしてきた
多くの物理学者に敬意を表したい。


★行動のヒント
・世の中は解らない事だらけだし、常識や定説は覆される。
・つまり、新しい発見やイノベーションのチャンスは山ほどある。

最後までお読み頂きありがとうございました。

宮木俊明

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